こんにちは、こばです。
前回のB/Lの話に続いて、
今回はサレンダードB/LとSea Way Billに関してまとめていきます。
B/LはサレンダーB/Lを使ってるんだけど、これはB/L?
船会社さんからSWBっていうのを勧められてるんだけど何?
こんな疑問に対して回答していきます!
結論から言うと、
サレンダードB/LもSWBもB/Lのようなもので
B/Lのオリジナルなしで貨物の荷受けできるようにしたもの。
でも正確にはちょっと違う。
では、詳しくみていきましょう。
船荷証券の危機
近年、サレンダードB/L(Surrendered B/L)やSWB(Sea Way Bill)がよく使われます。
僕も、実際に仕事で使うB/Lの95%以上がサレンダードB/Lです。
なぜ、今までのB/Lではなく、サレンダードB/LやSWBが使われているのでしょうか?
船荷証券の危機
サレンダードB/LやSWBが使われている理由として、船荷証券の危機と呼ばれる事態が発生したことによります。
船荷証券の危機とは、
コンテナ船の高速化などで、貨物が仕向け港に到着しているにも関わらず、B/Lがまだ荷受け人に到着していない事態
を言います。
船荷証券の危機の事例
例えば、日本から韓国への輸出の場合、大阪港を出航した船は釜山港に翌々日に到着します。
ETD Osaka: 5/18 (ETDは出航予定日)
ETA Busan: 5/20 (ETAは到着予定日)
この場合、5/18にB/Lが発行されます。
貨物の到着までにB/Lを郵送するにはかなり厳しいスケジュールです。
ちなみに、韓国向けには一般的なコンテナ船だけではなく、フェリーで輸送するという選択肢もあります。
フェリーの場合は大阪港を出向した翌日に、釜山港に到着します。
通常のコンテナ船よりさらに1日早いですね。
このように、貨物にB/Lが間に合わない事態の対策として
サレンダードB/LやSWBが使われ始めました。
サレンダードB/L (Surrendered B/L)とは
サレンダー?サレンダード?元地回収?
さっきからサレンダードB/Lと書いていますが、
サレンダーB/Lとかサレンダーと呼んだりすることもあります。
実際に、「このB/Lはサレンダーで」とか言ったりもします。
ここでサレンダードと言っているのは、英語表記でSurrendered(回収された)となっているからです。
B/Lが回収されることで、有価証券としての役割をなくしていることが肝になります。
サレンダーだと意味がおかしくなるので、ここでは引き続きサレンダードB/Lで記載しますね。
ちなみに、日本語ではB/Lの元地回収と言います。
サレンダードB/Lとは?回収されたってどういうこと?
サレンダードB/Lとは、船積み地の船会社が輸出者からB/L全通を回収する方法です。
サレンダードB/Lの仕組みは次のとおりです。
- 船会社はオリジナルB/L全通を輸出者から回収する
- B/Lを回収した船会社は輸入地の代理店に次の連絡をする
B/Lを回収したこと
輸入者へ貨物の引渡しを許可すること - 船会社は輸出者にSurrenderedと記載されたB/Lコピー(Non-nego)を発行する
- 輸出者は受け取ったB/Lコピー(Non-nego)をFAXやPDFで輸入者へ送付する
- 輸入者はオリジナルB/Lなしで貨物を引き取る
本来、B/Lとは有価証券であり、貨物の引換券でもあります。
そのため、船会社は仕向地でB/Lと引換に貨物を引き渡さなければなりません。
そのB/Lの回収を
仕向地ではなく、船積み地でやってしまおう、
というのがサレンダードB/Lの仕組みです。
B/Lを回収しているので、船会社はB/Lのコピーでも貨物の引き渡しができます。
そのため、B/L紛失リスクも少なく、事務処理も楽になります。
サレンダードB/Lの問題点
一見便利に見えるサレンダードB/Lですが、気をつけるべき点もあります。
- 輸出者は代金回収の方法を確保しておく必要がある
- 有価証券でないため、L/CやD/A、D/Pなどの荷為替手形取引での利用には不向き
- 信用上統一規則に記載がない
サレンダードB/Lは条約や法律に根拠がないため、あくまで便宜的な方法として理解しておいた方がいいでしょう。
そうはいっても、便利なのでアジア圏のビジネスではかなり利用されていますけどね。
SWB (Sea Way Bill) とは
SWB(Sea Way Bill)とは
SWB(Sea Way Bill)は日本語では海上運送状と言います。
SWBは運送書類であり、貨物受取証と運送契約書の機能を持っています。
B/Lとの違いは下の二つです。
- 有価証券ではないこと
- 貨物引き渡し請求権がないこと
有価証券でないので流通性がなく、紙面にNon negotiable(流通性がない)の表記があります。
そのため、荷受人欄(Consignee)は記名式で発行されます。
B/Lと異なり、オリジナルを船会社に差し入れなくても貨物の引き取りができる
SWBを利用した場合、仕向港でSWBを船会社に提出する必要はなく、荷受人であることが確認されれば貨物の引き渡しは行われます。
そのため、B/Lのように紛失のリスクはなく、事務処理の負担も減ります。
仮に紛失したとしても除権決定のような手間がありません。
SWBの問題点
SWBも便利なのですが、気をつけるべき点があります。
- 輸出者は代金確保の方法を確保しておく必要がある
- 有価証券でなく、流通性がないため、SWBを持って転売ができない
SWBの法的根拠
サレンダードB/Lと違いSWBには法的な根拠があります。
SWBは万国海法会 (CMI:Comite Maritime International)により、「海洋運送状に関するCMI特別規則」が1990年に採択されています。
そこでは、荷送人による運送品処分権などが規定されています。
信用上統一規則でも第21条にSWBに関する規定があり、L/C取引の際に銀行が受理できる条件が規定されています。
そのため、条件が合えばL/C取引にも使えます。
ただし、実際にL/Cに使用する場合は、事前に銀行に相談をしてください。
普通のB/Lと異なり有価証券ではないので、与信などの問題が出てくる可能性があります。
最後に
船荷証券の危機への対策としてサレンダードB/LとSWBを見てきました。
どちらもB/Lと比べて一長一短ありますが、便利なので実務では使われています。
輸出者として1番のメリットは
オリジナルB/Lを郵送する手間と費用が削減されることだと思っています。
メール1通で済むから事務作業が非常に楽になります。
サレンダードB/Lはアジア圏で、SWBは欧州圏などでよく使用されているようです。
そのため、欧州圏ではサレンダードB/Lと言っても通じないこともあるようです。
反対にアジア圏ではSWBをあまり聞かないような気もします。
これは個人的な感覚ですが・・・
サレンダードB/LもSWBも、早く貨物を引き取りたい輸入者にとっては非常に便利な仕組みであることのに違いはありません。
しかし、輸入者に依頼されたからと言って安易にサレンダードB/LやSWBを使ってしまうと代金回収のリスクが発生してしまいます。
前払いの場合や、送金を確認してからB/Lをサレンダードしてもらうなど、リスク回避の手立てを打ちながら、うまく利用していきたいですね。
こば@貿易屋
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