こんにちは、こばです。
いきなりですが、海外ビジネスでEPAって言われてピンときますか?
朝いつものように出社したら上司に呼び止められて
EPAに関して調べといて!
これからうちの会社でも使うつもりだから!!!
まあ、俺はよく知らんけど・・・
って言われたら・・・
今回はこういった質問に答えるため、EPAとは何かを説明します。
使いこなせると海外展開を有利に進められますよ。
EPAの実務に関しては別途まとめます。
今回は長くなりそうなので、先に結論です。
結論:EPAを使うことで関税が下がりコストダウンできる可能性がある
というわけで、EPAの説明をしていきますね。
EPAって何?
上司からの質問に対して
EPAってDHAと一緒にサプリに入ってるやつですよ(どやっ)!
はい、この回答はNGです。
残念ながらエイコサペンタエン酸じゃないです。
動脈硬化にも効果はありません。
海外ビジネスでいうEPAはEconomic Partnership Agreementの略語です。
日本語だと経済連携協定って訳されてます。
新聞でもEPAって書かれることが多いですね。
結局EPAは何?
似たものにFTAっていうのがあるので、こちらから理解する方がわかりやすいです。
FTA、EPA、TPPの違い
FTAとは
FTAはFree Trade Agreementの略です。
日本語だと自由貿易協定ですが、EPA同様にFTAという言い方が一般的に使われていますね。
FTAは国や地域間の関税の撤廃や削減などを定めた国際協定です。
なので、FTAを結んだ国家間で輸出入を行う場合、関税が無税になったり減少したりします。
FTAは関税の撤廃や削減を定めた国際協定
FTAを結んだ国家間の輸出入では関税が下がる
EPAとは
じゃあEPAは何か?
EPAは主に日本が使っている言葉です。
「関税の撤廃や削減」だけでなく貿易や投資を促進するための取り決めも含んでいます。
EPA = FTA+貿易や投資を促進するルール(ex. 知的財産権の保護や投資のルール)
EPAには、例えば次のような取り決めが含まれます。
「輸出入に関わる関税」を撤廃・削減する(FTA)
「サービス業を行う際の規制」を緩和・撤廃する(FTA)
「投資環境の整備」を行う
「知的財産の保護」
「ビジネス環境の整備」を協議する、など
EPAはFTAの上位互換といったものと言えるでしょう。
参考にJETROさんで使われている図を簡略化してみました。
こんなイメージ!
TPPとは
じゃあ少し前に話題になってたTPPって何?
あれも関税とかの話だった気がするんだけど・・・
TPPはTrans-Pacific Partnershipの略で環太平洋パートナーシップって訳されます。
TPPはメガFTAと言われ、シンプルに多国間で結ばれた巨大な自由貿易協定のことです。
メガだから、要はでかいんですね。
二国間でEPAをたくさん結んでいくのは手間だから、まとめてみんな一緒にEPAを結ぼう、といった感じです。
こういったメガFTAは最近増えてきており、交渉中のものも含めてTPPの他に次のようなものがあります。
メガFTA | 参加国 |
TPP | 日本、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージーランド シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナム |
日EU EPA | 日本、EU |
TTIP | アメリカ、EU |
RCEP | 日本、ASEAN、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド |
日中韓FTA | 日本、中国、韓国 |
ここまでのまとめ
FTAとEPAとメガFTAの関係をまとめるとこんな感じになります。
FTA:関税の撤廃や削減
EPA:FTA +それ以外のルールの整備
メガFTA:複数国・地域間で結ばれたFTAやEPA
EPAを使うメリット
じゃあ、EPAを使うとどんなメリットがあるのでしょうか。
海外ビジネスで特に大事なのは次の2点と言えるでしょう。
・関税が下がることで貿易の自由化が促進される
・投資や人の行き来が増えることで、各国感の結びつきが強くなること
特に関税が下がる、または無税になる可能性があることで進出国に対する価格競争力が強くなります。
もしくは輸入の際に関税がかからないことで仕入れコストが下がります。
EPAを使いこなすことができれば、海外ビジネスをする上で有利なポジションにつけると言えるでしょう。
WTO→FTA/EPA→メガFTA
ここで、少しWTO、FTA/EPA、メガFTAの歴史的な流れを見てみましょう。
関税とか貿易ってWTOが仕切ってるって習った気が・・・?
WTOとかとの関係はどうなってるの?
確かにWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)は世界の貿易ルールを決めるために作られました。
世界の関税とか非関税障壁を減らしていこう、そんな目的のために活動していました。
しかし、重大な制度的な欠陥があったのです。
WTOに加盟していたのは161の国と地域。
そしてルールを決めるためには「全会一致」の原則がありました。
先進国と途上国の意見が一致せず、WTOでの交渉は停滞することは想像に難くありません。
学級会や会社で全会一致を原則にすると話が進まなくなりますよね。
それと同じです。
そこでWTOは例外的にFTAを認めました。
WTOには全ての加盟国に等しく関税をかける最恵国待遇(Most Favored Nation Treatment)の原則があります。
FTAやEPAは特定国に対してのみ関税を引き下げるため、最恵国待遇の原則に反します。
しかし、一定の条件のもとで例外的に認めています。
例外的にというのは次の条件です。
・域内の関税・貿易障壁を実質的に全て廃止すること
・関税や貿易障壁をFTA締結以前より高めないこと
この例外的条件のもとで、FTA/EPAはどんどん増えていきました。
2019年度で320件に達したとのことです(参考:JETRO ウェブサイト)。
ところが、FTAやEPAが増えてくると「協定ごとにルールが異なる」という問題が出てきました。
例えば、原産地証明書を作る際、日本・シンガポールEPAと日本マレーシアEPAでは別の様式の原産地証明書が必要です。
それぞれに対応しないといけないんですよね。
これは事務職にはたまったものじゃありません。
そこで、二国間交渉を続けていくのも非効率的であるため、地域単位で交渉する動きが出てきました。
これがメガFTAです。
TPPを利用する場合は同じ原産地証明書が使用できます。
そしてTPPをきっかけに、世界ではメガFTAが増えつつあります。
関税って何?
いつ、誰に関税がかかるの
ということは、EPAを使うと輸出する時とか輸入する時の関税がかからなくなるのね(どやっ!)
残念ながらちょっと違います・・・
確かに、EPAで関税が下がる可能性はあります。
その話をする前に、関税について簡単に説明します。
・関税がかかるのは輸入の時
・輸出の時に関税はかからない
例えば、日本から台湾に輸出する場合、関税は台湾での輸入通関の時にかかります。
日本での輸出時にはかかりません。
反対に、台湾から日本へ輸入する場合、関税は日本での輸入通関の時にかかります。
つまり、原則的に輸入者が関税を払います。
例外はDDPで輸出する場合です。
DDPの場合のみ、輸出者が輸入関税を支払います。
関税の種類って?
関税は税率によっていくつかの種類があります。
関税は課税価格に税率がかけられることで決められます。
課税価格が100万円で、税率が4%の場合、関税は4万円になります。
EPAで関税が下がるので、少なくとも2種類はあることになります。
実際には次のようなものがあります。
税率名称 | 概要 |
基本税率 | 協定や別途法律で定めのない限り適用する原則的な税率。現在、東ティモール、北朝鮮、赤道ギニア、 レバノンなど数カ国に適用。 |
WTO協定税率 | WTO全加盟国・地域及び二国間条約で最恵国待遇を約束している国からの産品に対しかけられる税率。 |
一般特恵税率 (GSP税率) | 開発途上国で、特恵関税の供与を希望する国のうち、我が国が当該供与を適当と認めた国を原産地と する輸入貨物に適用される税率。特恵原産地証明書(Form A)が必要。 |
特別特恵税率 (LDC税率) | 特恵受益国のうち、後発開発途上国(LDC)を原産地とする輸入貨物に対して適用される税率であり、 税率は全て無税。特恵原産地証明書(Form A)が必要。 |
暫定税率 | 一時的に基本税率を使いにくい事情がある場合に適用される税率。 |
EPA税率 | 日本がEPAを結んでいる国に対して適用可能な税率。 |
相手国によって使える税率が異なります。
また、貨物のHSコードによっても税率が変わってきます。
そのため、どの税率を使うかは事前に確認をする必要があります、
EPAの条件によっては、実はWTO税率の方が安いこともあります。
その場合、EPAを結んでいる相手であっても、EPA税率を使う必要はありません。
国によっては日本ASEAN・EPA、TPP、個別のEPAが重複している可能性もあります。
この場合、どのEPAガもっとも税率が低いのか確認する必要があります。
EPAを使えば必ず関税が安くなる、というわけでないことは注意してください。
日本はどことEPAを結んでいるの?
日本のEPAの発行状況・交渉状況などは次のとおりです。
発効済:シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP11、EU
交渉中:RCEP、トルコ、コロンビア、日中韓
交渉中断:GCC、韓国、カナダ
EPAの問題点
EPAを使うと、確かに関税が下がりコストカットできる可能性があります。
しかし、デメリットもないわけではありません。
まず、EPAを使うために必要なこと3点を紹介します。
日本と取引先の国がEPAを締結し、物品が関税引き下げの対象になっていること
EPAにおける原産品であること
輸入する際に、税関に対し原産地証明書を提出する等必要な手続きをすること
これを踏まえた上で、ここでは僕が考えるEPAのデメリットを2点紹介したいと思います。
原産地証明書
EPAの利用では原産地証明書が肝になります。
EPA用の原産地証明書の場合、普段商工会議所で発行してもらう原産地証明書と異なります。
Made in Japanを証明することの難易度が高くなっていますので、作成にあたって心が折れないようにしてください。
原産地証明に関しては、別途まとめます。
他国の競合他社はFTAを使えるが、日本の自社が使えない場合
日本がEPAを結んでいない場合は、他国のFTAがマイナスの影響を起こします。
例えば、日本と韓国はEPAを結んでいません(2020年9月時点)。
しかし、EUと韓国はFTAを結んでいます。
代替可能な商品を韓国に送る場合、
日本から販売した製品には関税がかかり、EUから販売される製品には関税がかからないか、少なくて済みます。
そのため、顧客から値下げ依頼が来るなど、日本品が不利な立場に立たされてしまう事もあるでしょう。
こば@貿易屋
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