こんにちは、こばです。
【質問】
海外の会社と新規の契約を結ぶ時って、どんなインコタームズ を選んだらいいの?
仕事を減らしたいからEXWとかFCAとかがいいんだけど・・・
これから貿易を始める、初めて海外のお客さんに提案をする、そんな時に
どうやってインコタームズ を選べばいいか
どうやってインコタームズ を使えばいいか
悩みますよね。
海外取引をしている会社の話を聞いても、かなり大胆な(危なっかしい)提案をしているケースを耳にします。
- お客様のところまで届けてあげたいからDDPで
- 手間が増えるのは嫌だからEXWとかFOBがいい
- 価格を決めてから、お客さんにインコタームズ を伝える、など
これらは一例ですが、どれもなかなかに大胆な提案方法です。
1と2はわかりやすいと思うのですが、3のケースがあるのにはびっくりしました。
3の事例で少し話をします。
3の場合は、おそらくその会社で「定価」のようなものがあるのかと思います。
お客さんに「1つ500円です」と伝えてしまうような場合ですね。
しかし、「1つ500円」としても、FOBで500円なのか、DDPで500円なのかでかかる費用は大きく変わってきます。
単純化しますが、FOBの場合は輸出通関まで費用を持てばいい。
しかし、DDPではお客さんの手元に届くまで全ての費用を持つ必要があります。
コストが変わり、利益も変わってきます。
その見積もりに意味はあるのでしょうか?
次に「かかるコストを抑えたいからEXWでやりたい」といった主張が出てきます。
売値が決まっているのならば、コストの少ないEXWを選ぶほうが利益が大きくなりますからね。
さて、海外のお客さんは日本の国内輸送や通関手配をできるのでしょうか?
手配してあげた運賃と通関費用は向こうが持つとして、その手配した人件費は?
本来、海外取引を便利にするためのインコタームズ です。
しかし、この場合は足かせになっているように見えます。
インコタームズ も契約の一部です。
もっと主体的にインコタームズを使いこなして欲しいものです。
そこで、どういった基準からインコタームズ を選べばいいのか、それを今回説明していきます。
インコタームズ を選ぶときのポイント
どのインコタームズ が自社のビジネスに適しているか、選ぶときのポイントは3点です。
- 費用はどちらが負担するのか
- 海上保険はどちらが負担するのか
- 貨物はどこで引き渡すのか
この3点を順番に説明していきます。
費用(運送費用)
費用はどちらが、国内輸送費・通関費用・船積み費用・海上運賃・輸入通関費用・輸入国内費用などのどこまでを払うか、で決めます。
特に、
海上運賃をどちらが払うか
輸入国内の輸送費などをどちらが払うか
が一つの分岐点になります。
ざっくりとですが、下の表のようになります。
輸出者は何も払いたくない | EXW |
輸出者が日本国内の費用は持つ(通関もする) | FCA、FAS、FOB |
輸出者が海上運賃も払う | CPT、CIP、CFR、CIF |
輸出者が相手国の国内輸送も行う | DAP、DPU、DDP |
表の下に行くほど、手間も費用もかかります。
コンテナ貨物の場合、一般的な落とし所はFCA、CPT、CIPに落ち着くかと思います。
在来船用のインコタームズ だと、FOB、CFR、CIFですね。
通関費用は持つとして、海上運賃をどちらが持つかが「FCA、FOB」と「CPT、CIP、CFR、CIP」の分岐点ですね。
DAP、DPU、DDPは相手国の国内輸送まで行う場合に使用します。
相手国国内の工場までの運賃を運ぶ、そういった場合に使われます。
ここで問題になるのが相手国の国内輸送費用です。
もし何らかのトラブルで追加運賃がかかる場合、それは輸出者が追加で支払う必要があります。
また、DDPでは輸入関税は輸出者が支払うことになっています。
しかし、輸入関税に関して、事前に確定させることは困難です。
もちろん調べることはできますが、通関後に実費の請求書が届けられます。
関税が想像以上に高かったら・・・当然、輸出者が支払うことになります。
お客様のところまで貨物を届けてあげたい。
その気持ちはわかりますが、それには不確定要素が残るという問題点があることは覚えておいてください。
海上保険
費用にも関係するのですが「海上保険の費用をどちらが持つか」でも、どのインコタームズ を選ぶかが分かれます。
輸出者が保険をかける場合は「CIP、CIF」、輸出者がかけない場合は「CIP、CIF以外」です。
DAO、DPU、DDPは輸出者に保険をつける義務はありません。
輸出者が海上保険の手配をする | CIP、CIF |
輸入者が海上保険の手配をする | EXW、FCA、CPT、DAP、 DPU、DDP、FAS、FOB、CFR |
貨物の引き渡し地
これはどこで輸入者に貨物を引き渡すかの地点です。
どの時点までの責任を負うか、とも言えるかと思います。
大きな分岐点として
港まで(船会社に貨物を引き渡すか、船側に置く、本船上に置くまで)責任を負う
輸入国の指定地まで責任を負う
といった違いがあります。
売主の施設 | EXW |
日本国内の引き渡し地点 | FCA、FAS、CPT、CIP |
輸出側本船の上 | FOB、CFR、CIF |
輸入国指定地 | DAP、DPU、DDP |
DAP、DPU、DDPを使う場合、本当に輸入国で起こったトラブルに対して、あなたは責任が取れますか?
お客さんのところまで届けてあげたい、善意からの重いかと思います。
しかし、こういったリスクまで想定しての善意でしょうか。
ちなみに、僕もこれらの規則を使うことがあります。
小口の貨物でFedExやDHL、UPSを使う場合には使います。
また、それ以外の普通の輸出の場合は、運賃ではなく、どれだけその運送会社が信頼できるかで依頼をします。
そうはいっても、個人的にはDDPではやりたくはないですね。
個人的なおすすめ
コンテナ貨物ならFCA、CPT、CIPで問題はないかと思います。
その中で、運賃や保険に関してはお客さんとのやり取りで決めればいいです。
例えば、輸入者がNominationを使いたい場合はFCAになるでしょうし、
輸入者の国が自国保険主義をとっている場合はCIPは使えず、CPTやFCAになるでしょう。
ただし、もしコンテナ貨物だけどFOB・CFR・CIFを使う必要がある場合で、
個人的にはCIFを勧めています。
その理由は次のとおりです。
輸入者がかけた保険では、コンテナターミナルで起きた事故は、補償対象外の可能性があります。
単純に、本船に乗せるまでは輸出者の責任であり、その事故は輸入者の責任ではありません。
そのため、輸入者がかけた保険では、輸入者の責任外の損失は補填されない可能性が高いです。
反対に輸出者がかけた保険の場合は、コンテナターミナルで起きた事故も補償対象になり得ます。
正確には保険会社に相談するべきですが、過去にこのような事例がありました。
保険が手間と言われるのですが、これがCIFを使った方がいいと考える根拠です。
こば@貿易屋
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