【貿易初心者も玄人も重要!】インコタームズ 2020とは

インコタームズ

こんにちは。こばです。

質問:
 海外ビジネスを始めたんだけど、インコタームズって何?
 CIFとかCIPとかFOBとかややこしいし結局なんなん?

海外ビジネスを始めると避けては通れないインコタームズ、今回はこれを解説していきます。

結論:
   輸出者と輸入者の「危険負担」「費用負担」「義務」の範囲を定めている
   昔から使われており、輸出者も輸入者もよく知っているので使いやすい
   2020年版のインコタームズは11種類ある

インコタームズって何?

貿易をするときの取引相手は外国です。当然、言葉も文化も商習慣も異なります。
取引のたびに次のような諸条件を毎回交渉して契約をするのは非常に手間がかかります。

  • 輸出入両国の国内輸送
  • 輸出入通関
  • 関税
  • 海上輸送
  • 保険
  • 事故が起きたときの責任範囲

さらに、条件にモレや誤解があれば、輸出者と輸入者の間でトラブルが発生します。

このような手間やトラブル(紛争)をさけるために、長年の商習慣からインコタームズは生まれてきました。
インコタームズでは貿易をする売手と買手の責任範囲を、いくつかのパターンで定めています。
そのパターンの中から、適当なものを選ぶことで、売手と買手の責任範囲がある程度決めることができる、貿易の基礎知識です。

この記事ではそのインコタームズ の概要をまとめています。

そもそもインコタームズって何語?誰が決めてるの?

貿易に関わっていなければ、「インコタームズ」とう言葉は聞き慣れない言葉かと思います。
タームズは英語っぽいけれど、インコって何?

実は、インコタームズは造語です。

International Commercial Termsの青字部分を組み合わせた造語でIncotermsと書きます。

国際商工会議所(ICC:International Chamber of Commerce)が制定している国際規則です。
最初のインコタームズは1936年に策定されました。
以降、1953年、1967年、1980年、1990年、2000年、2010年と改訂されており、最近では2020年、この記事を書いている年に最新版が公表されました。
60年以上にわたり海外ビジネスで使用されているため、貿易には馴染みの深い規則になりました。
そのため、初めての取引先とでも共通の規則として使いやすいです。

貿易に関するテキストには、必ずインコタームズ の説明が入っています。
もしオリジナルを見たくなれば、国際商工会議所の日本委員会で書籍の購入可能です。
オリジナルでは前半は英語で、後半は日本語でそれぞれの規則の解説が記載されています。

インコタームズ 2020 が定義する責任範囲:危険負担・費用負担・義務

インコタームズでは責任費用当事者の義務の3点を定めています。

  • 輸出者と輸入者の危険負担/責任の範囲
  • 輸出者と輸入者の費用負担の範囲
  • 輸出者と輸入者の義務
危険負担/責任

インコタームズでは貨物の輸送を行う時に「輸出者と輸入者の責任がどこからどこまでか」を定めています。
言い換えると、「事故が起きたとき、どちらの責任になるのか」です。

例えば、京都の工場から大阪港へのトラック輸送中に事故がおこった場合、どちらの責任か?
FOBやCPTなどの規則で契約していれば、売主の責任で対応します。
しかし、EXWで契約している場合、それは買主の責任になります。

費用負担

またインコタームズでは「輸出者と輸入者の費用はどこからどこまでか」も定めています。
言い換えると、「通関や船、保険などの手配や支払いはどちらが行うか」です。

例えば、CPTで契約している場合、売主は国内輸送、輸出通関、船積み、本船の手配をおこない、その費用を持ちます。
一方で、EXWで契約してる場合、売主は工場に貨物を置いておくだけです。国内輸送の手配から先は全て買主の責任になります。

義務

そして上の責任と費用に加えて、その契約を遂行する義務が定められています。
FOBやCPTの場合は、輸出通関手続きをおこないその費用を負担せねばならない、といった記載があります。
CIPやCIFの場合は保険契約に関する義務も記載されています。

インコタームズ 2020 が定めていないこと

上に、インコタームズ2020で定めていることを記載しました。
同時に、定められていると勘違いしがちだが、実は定められていないことも重要です。
ICCのIncoterms 2020に「敢えて定めていない」と書かれているので、注意するべきです。

  • 売買契約が成立しているか否か
  • 売買される物品の仕様
  • 代金支払い時期、場所、方法、使用通貨
  • 売買契約の違反に対して請求できる救済方法
  • 契約上の債務の履行遅延その他の違反の結果
  • 制裁の効果
  • 関税の賦課
  • 輸出または輸入の禁止
  • 不可抗力または履行困難
  • 知的財産権
  • 上記違反が生じた場合における紛争解決の方法、場所または法
  • 所有権等の移転

特に所有権に関しては勘違いしやすいので注意が必要です。
インコタームズ の危険負担が移ったことを根拠に所有権は主張できません。

こういったインコタームズ が定めていない項目に関しては、別に契約書などで取り決めをしておく必要があります。

インコタームズ 2020:2分類11種類の規則

2020年版のインコタームズでは11種類の規則があり、それらは大きく二つに分類されています。
11種類の規則はFOBやCIF、CIPなどアルファベット3文字で表記されています。

いかなる単一または複数の運送手段にも適した規則

EXW: Ex Works 工場渡し

FCA: Free Carrier 荷送人渡し

CPT: Carriage Paid To 輸送費込み

CIP : Carriage and Insurance Paid To 輸送費保険料込み

DAP: Delivered at Place 仕向地持込渡し

DPU: Delivered ar Place Unloaded 荷卸込み持込渡し

DDP: Delivered Duty Paid 関税込み持込渡し

海上及び内陸水路運送のための規則

FAS:  Free Alongside Ship 船側渡し

FOB: Free on Board 本船渡し

CFR: Cost and Freight 運賃込み

CIF: Cost Insurance and Freight 運賃保険料込み

この中でも、FCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIFあたりがよく使われる規則です。
個別の規則に関しては、解説を上げていきます。

2つのグループ:「いかなる単一または複数の運送手段にも適した規則」と「海上および内陸水路運送のための規則」

この二つのグループはインコタームズ2010年版に導入され、2020年版でも引き継がれています。
しかし、インコタームズ の変更に気づかず、もしくは変更を重視せず、FOBやCIFをコンテナ貨物に使っている会社も多いのではないでしょうか。

どこが違うのか?
なぜ使ってはいけないのか?
それを次に見ていきます。

2つのグループの違い

「いかなる単一または複数の運送手段にも適した規則」

このグループは、いわゆるコンテナ輸送に使われる規則です。

このグループの規則では、運送人に貨物を引き渡した時点で危険負担が売主から買主へ移転します。
そのため、コンテナヤード で船会社などの運送人に貨物を引き渡すコンテナ貨物に適してる規則であると言えます。

また、航空貨物の場合はそもそも船に乗せるわけではないので、船に乗せることが前提のFOBやCFR、CIFはです。
航空貨物でCFRを使った場合、貨物は船に乗ることはないので、どこまでが売主の責任範囲になるのでしょうか。

本来、責任範囲を明確にするためにインコタームズ を利用します。
しかし、コンテナ貨物にFOBやCFRなどを誤用することで、反対に責任範囲が曖昧になってしまうのでは本末転倒です。

「海上および内陸水路運送のための規則」

このグループの規則は在来船や石炭の輸送など、船に直接貨物を乗せる場合(FASは船側に置く場合)を想定した規則です。

本船に貨物を置いた(FASでは船側に置いた)時点で、売主は買主に貨物を引き渡すことになります。
それ以降の危険負担は買主の負担になります。

ここでは「海上」や「内陸水路運送」と明記されている通り、航空貨物への使用は想定されていません。
飛行機を船に見立てて、「CFRでの契約では飛行機に積んだ時に危険負担が移転する」、といった主張は根拠のないものになります。

うち、コンテナ貨物でFOBとかCFRとかCIF使ってるんだけど・・・

率直にいって、こういったケースは結構あります。

FOBなどをコンテナ貨物や航空貨物に使っている話はよく聞きます。

1980年の改定でインコタームズにFCA、CPT、CIPが新しくふえました。
しかし、なかなか馴染まなかったようです。
FCAなどができてから15年後、1995年にインコタームズ の使用率が調査されました。
しかし、そこでFCA、CPT、CIP、FOB Airportの使用率は0.57%とのことです。

実務の場ではFOB、CFR、CIFが主流のため、FCAなどは使いこなされなかったようです。
そのため、昔の習慣から、今も惰性で使っている会社もあるかと思います。
また、自社の習慣だけでなく、お客さんの習慣で変更が難しい、というケースもあります。

しかし、こういった保険の補償などで不要なリスクを抱えてしまう可能性もあります。
リスクを理解した上で、妥協して使い続けるのならまだしも、
前もそうだったからというだけの理由で誤用を続けることは危険ですので、
一度、インコタームズ の契約を見直すべきです。

必ずインコタームズを使わなければいけないのか?

インコタームズって11種類の中から選ばないといけないの?
FCAだけど保険もかけたいんだけど・・・

こういったシチュエーションもあるかと思います。

例えば、お客さんとはFOBで合意をした。
しかし、お客さんがちゃんと海上保険をかけるか心配だ。
単価も高いし、トラブルが起こって貨物が破損した場合、クレームが起こってめんどくさくなる。
こっそり輸出者で保険をかけたいなぁ・・・とか、

例えば、お客さんが馴染みの船会社を使いたいからFOBでの契約を望んでいる。
しかし、輸入業務に慣れておらず、「輸出者で保険を付保してくれないか」といってきた。
輸出者が保険をかける場合、CIPしかないので、お客さんにはFOBでなくCIPにしてくれ、というべき?

結論として、インコタームズの利用は国際法や国際条約で強制されているものではありません。
便利だから、使い勝手がいいから、みんな使っています。
そのため、輸出者と輸入者との合意があれば、インコタームズ を変更して使うことも問題ありません。

上の例の場合だと、FOB + I と変更して使う、といった方法も想定されます。

しかし、こういった変更は誤解も生みやすいので、十分にお互いに取り決める必要があるので注意してください。

インコタームズは貿易の基本ですが奥が深いです。
インコタームズの解説は一般的な貿易の教科書にも載っているので、
まずは一読しておくことをお勧めします。

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コメント

  1. […] 参考:インコタームズ […]

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