見積:価格はインコタームズ別、数量別の複数の提案をした方がいい

こんにちは、こばです。

商売をしていると、当然、見積もりを出す機会がありますよね。
海外ビジネスも同じです。
今回の提案はこれです。

海外ビジネスで見積もりを出す際は、条件の異なる複数の価格を提示してください。

質問
 海外のお客さんに500円/kg(1kgで500円)っていう見積もりを言ってしまった。だから、できるだけコストのかからないFOB/FCAでやりたいんだけど・・・
 
 FOB/FCAが一番利益が高くなるでしょ。だって、CIF/CIPと比べると船代も保険代も払わなくていいから・・・

これ、実際に聞いたことのある話です。
しかも、既に海外ビジネスを何年もやっている会社の方から。

答えから言います。

インコタームズ 別や、数量別で複数の見積もりを出してください。

見積もりはインコタームズもセットで出す

買い手「この商品ってkgあたりいくらなんですか?」
売り手「500円ですけど、どうです?」

「ここまで雑な見積もりや価格の提案はないだろ」
と言いたいところですが、残念ながら近い話はたまに聞きます。

海外ビジネスの場合、500円/kgはほとんど意味のない価格です。
なぜなら、この価格には運賃や保険費用など価格の算定に必要な条件が触れられていないからです。

条件によって価格が変わること、ありますよね。
例えば、国内ビジネスでも、通販の場合には但書がついてたりします。
 沖縄や離島の場合は送料は別途XXXX円です
的な文章です。
海を渡ることで、運賃が余分にかかるから、特別な運賃がかかるというものです。

海外ビジネスの場合、数量によって、運賃だけで数万円以上の差額が発生します。

例えば、
 FOB/FCA:日本の港で引き渡す場合
 CIF/CIP:相手国の港などまで運ぶ場合
では海上運賃や保険料などの差額が出てしまいます。

売り手「500円/kgですけど・・・(FOB大阪でいいや。船の手配が面倒だし。)」
買い手「500円/kgか・・・(CIP香港かな。思ってたより安いな。)」
売り手・買い手「じゃあ契約を進めましょうか」

間違いなく、これは契約書の段階で揉めますよね。

これを避けるために、見積もりの際には必ず
「500円/kg FOB OSAKA」
というようにインコタームズ をつけてください。

見積もりは複数出してもいい

「500円/kgならFOB/FCAでやりたい。CIF/CIPよりコストが少ないし、その分利益が取れる!」

これを言う方、たまにいます。
で、こう言う話から次に出てくる相談はこんな形です。

「500円/kg FOB OSAKAで見積もったんだけど、CIFに変えてくれってお客さんに言われて困ってる。運賃を払うと赤字になってしまう。どうしたらいい?」

これも結論から書きます。
複数の見積もりを別の値段で出してください。

例えばこんな感じです。
Quantity: 1,000kgs
Price:
FOB OSAKA: JPY500/kg
CFR HongKong: JPY530/kg
CIF HongKong: JPY535/kg
*価格は適当です。

こうするとお客さんも選びやすくなります。
「妥当な金額だからCIFで頼む」とか、
「船はうちが手配するほうが安いから、FOBでお願い」とかです。

特に最初の見積もりでは相手の条件がわからないこともあります。
特に問題になるのは船代と保険料なので、インコタームズ が決まってなければ、FOB/CFR/CIF(FCA/CPT/CIP)くらいの見積もりはした方がいいです。

僕の事例

海外の新規のお客さんとの輸出案件で、見積を出す際に「船の手配は輸出側でしてくれ」との話を受けました。
保険の手配もこちらでするつもりだったので、CIPで見積もり、出荷準備をしていました。

しかし、契約後にお客さんからドアデリバリーをして欲しいとの再度の連絡。
ここで再交渉です。
相手国国内運賃込みの価格を再提示し、CPTからDPUへの変更です。

この段階で、二つの価格が提示されたことになります。
CIPとDPUの価格の異なる見積です。

ところが、DPUで輸出手続きを進めていると、次は輸入関税も払って欲しいとの連絡。
つまり、DPUではなくDDPで発送して欲しいとの追加の依頼でした。

DDPへの変更は断りました。その理由は次の通りです。

DDPで輸入関税をこちらが持つ場合、出荷時点では関税額は確定しません。
つまり、事後にどれだけの費用がかかったかが請求されるわけです。
弊社では、いくらになるかわからないと言うリスクは取れません(取りたくありません)。
そのため、DDPへの変更は断り、DPUでの出荷としました。

このようにCIPからDPUへ変えるのであれば、堂々とその場合の価格も再提示するべきです。
もちろんDDPを受けるのであればその価格も別途提示するべきです。

また、価格だけでなく、インコタームズ が交渉の対象になることもあります。
この事例では、DDPは価格だけの問題ではなく、輸入関税が未確定というリスクがついてきます。
もちろん、付き合いの長い(信用できる)取引先の場合はDDPを受けたかもしれませんが・・・

どのインコタームズ なら受けるのか、また受けないのかは決めておき、
お客さんに依頼されたからと言っても、必要以上のリスクを取るのはやめましょう。

数量別見積もり

海外ビジネスは販売数量が大きくなりがちです。
と言っても、海外ビジネスに限らず、数量別の見積もりは多くの会社が出していると思います。
ここで、僕が言いたいのは「数量別の見積もりをしましょう」ではなく、
少量での見積もりもした方がいい、と言う話です。

買い手「一回の注文で10トン買う予定だから、10トンでの見積もりをください」
売り手「10トンでの購入の場合、CIP Keelungで500円/kgです」

こんな場合ですね。
これは機械といったものではなく、販売数量の多い素材などを対象に考えています。

さて、このお客さんはちゃんと10トン買ってくれるでしょうか?

もちろん、将来的に10トン単位の注文が入るかもしれません。
でも、1回目の注文はどうでしょう?

「最初は1トンから始めたいので500円になりませんか?」
「テストしたいので20kgs注文します!」

500円という価格を相手が持っている場合での再見積もり、
結構消耗します。
そのため、このように最初のオファーの段階で10トン買いたいと言う話が出れば、より小さい数量の価格も提示するようにしています。

例えばこんな感じです。

Packing: 20kgs
Price:
– 20kgs: JPY3,500/kg by FedEx
– 1,000kgs: JPY800/kg CIP Keelung by sea
– 5,000kgs: JPY600/kg CIP Keelung by sea
– 10,000kgs: JPY500/kg CIP Keelung by sea
*費用の計算は適当です

必要があれば、これにMOQ(Minimum Order Quantity)を付けたりもします。
MOQは購入の最小単位のことです。
MOQ: 20kgsと追記したりすることで、20kgs以下の販売は行わない、と先にいってしまいます。

このように見積もりで要求を示すことで、後々発生する不要な交渉を避けることができます。

複数の見積もりを出す、これはコストが異なるから価格も異なるのは当然のことです。
しかし、こういった問題でつまずいてしまうケースは、意外によくあります。

前もって複数の見積もりを出すことで、不要な交渉を避けられたり、価格の提案で突っ込まれる隙を防げたり、何度もやりとりをする手間が省けたりしますのでお勧めです。

参考:インコタームズ

こば@貿易屋

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